三馬鹿

三馬鹿日記

三馬鹿 出会い編

  1. 出会い編

四月、桜舞う校門をくぐる。目の前には俺、こと佐伯澪が今日から通う高校が青空を背にして新入生を歓迎していた。そう、今日は人生に一度の高校の入学式だ。
ちらほら見える生徒とその親に一瞥もくれず、俺は煙草の入ったポケットに両手を突っ込み入学式の受付を行っている昇降口とは別の道を辿っていた。
入学式なんてやる意味も感じられないし、座っているだけの式に俺一人いなくても何の問題もないだろう。…ヤニ切れも起こすし。等と言い訳をしつつ、入学式をバックレようと煙草が吸えそうな場所を探す。
手頃な場所を見つけ、石段の上に腰掛け煙草を取り出し一服。
「入学式からこんなんで友達できんのか俺…」
散りゆく桜をぼーっと眺めながら独り言ちる。コミュ障もコミュ障な俺は入学式というものがそもそも苦手だった。さっきの言い訳なんて建前で、面倒臭いとか以前に不安で仕方なかったのだ。憂鬱な溜息と一緒に煙を吐き出す。
そろそろ一本目を吸い終る頃だった。俺が歩いてきた方向から足音が聞こえる。もしかしたら見回りの先生がやってきたのかもしれない、もしかしたら在校生かも。焦った俺は煙草の火を素早く消し隠れようとするが遅かった。俯いていても気配でわかった。目の前に、いる。
恐る恐る顔を上げると、同じ制服を着て、まだ火を点けていない煙草を銜え俺を覗き込む金髪の男が立っていた。
「俺、堀奏多!一年?だよな。お前もサボりかー?入学式とかめんどいよな~」
と唐突に自己紹介を始めるので同じ新入生だということを知る。よかった、おれと同じサボりだ。ていうか入学式に金パって正気かよ…そもそもこの人、俺の最も苦手なタイプのパリピヤンキーじゃん超怖い。
でも死ぬほど笑顔が眩しいな…後光さしてない…?本当に人間かよこいつ、俺と人種が違いすぎる。
初対面なのにあまりの馴れ馴れしさで思わず面食らう俺を無視して堀君は俺の隣に座った。未だに会話らしい会話ができていないのは俺のコミュ障レベルがマックスだからだ。しんどい。
堀君は銜えてた煙草に慣れた手つきで火を点ける。あ、俺と同じ銘柄じゃん…と思いながらこれが会話の糸口に…いやまず俺も自己紹介を…と考えるが言葉が出ない。マジで泣ける。
しかも隣は急に黙りだすし俺のライフは一瞬で0になった。負けるな俺、頑張れ俺。
「…佐伯、澪」
こんなにも簡潔な自己紹介なんてあるか?と自分で突っ込んでしまうほど、取り敢えずの名前しか出せなかったが、笑顔でよろしくな!と言う堀君はたぶん滅茶苦茶良い奴なのだろう。
俺ら同じ銘柄じゃ~んと堀君から話を振られてしまった。そんな感じで他愛もない話を暫くしながら入学式が終わるのを待っていると、また同じ方向から足音が聞こえる。
今度こそ見回りがくるかしれないと早くに察した堀君が、俺の腕を引っ張り二人で物陰に隠れる。いや煙草の火!!!あっぶな!!!
「匂いでバレるだろ…」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
何を根拠に言っているのか、首を捻る。だが堀君の自信たっぷりの言葉に少し安心し、ごくりと生唾を飲み込む。
そしてやはりその心配は杞憂に終わった。足音の正体は俺たちと同じ制服に身を包む男…しかもイケメン。めちゃくちゃイケメン。たぶんこいつも新入生なのだろう。しかも同じく煙草を吸ってる。ここにはヘビスモしかおらんのか。堀君は目を輝かせて今にも飛び出しそうだった。
俺たちが座っていた石段に座り遠くを見つめながら、煙草の紫煙を吐き出すその横顔に思わず見惚れる。その男がコンクリートの地面に煙草を押し付け火を消した、その瞬間だった。隣にいたはずの堀君はいつの間にかいなくなっていて、イケメン君に姿を現していたのだ。
「お前一年?俺も一年~ここで何してんの~」
いや元気かよ…もう本当に呆れることしかできない。警戒心とかこいつ、子宮の中に置いてきたのか?俺は黙って二人の様子を眺めることしかできない。
面倒なのは勘弁とどう考えても顔に書いてあるのによく話しかけれるなと尊敬の念すら覚える。俺には絶対無理。
陰に隠れてひたすら待っていると堀君が急に振り返り俺とばっちり目を合わせてきた。嫌な予感しかしない。ちょっと待ってくれこの状況で出られるほど俺のコミュ力カンストしていないんだ、そもそも人から逃げてここに来たのに気づいたら三人もいるけど…?
「澪君お前もこいよ!」
「…あ、もう一人の黒髪…」
いやバレてるし!死んだ!手招きする堀君に俺は渋々と顔を出す。もうこうなったら友達になってやんよ!と急に俺のイキり精神が顔を出す。それにしてもパリピ、怖すぎるな…
「ほら~言った通りだろ?こいつ悪い奴じゃないって!」
「あ~うん、堀君が一方的に話しかけているだけなのは見て分かった…」
「んなことねぇって!」
堀君の悪くない奴の基準がいまいちわからないが、ここで入学式サボって煙草を吸ってる時点で大分悪ガキなのは否めないぞ…俺も然りだけど。
まともな奴は誰としてここにはいないことはわかった。ていうかまともな奴はそもそもこんな所にいない。
「まじで堀君のコミュ力舐めてたわ」
「いや~そんな褒めるなって。照れる」
「褒めてねぇ…」
「なーに怒ってんだよ~ヤニ切れ?さっき吸ってたのに?早すぎ~」
会話が猛烈なスピードで進んでいく…これがパリピか…俺たちの掛け合いを煙草を吸いながら眺めているイケメン君が、ここから逃れるためか腰を上げようとしている。気持ちはわかる。こっそりと立ち去ろうとするのを堀君が見逃すはずもなく、それを止めた。
それだけでなくそのままイケメン君の隣に座りだすので俺も取り敢えず腰掛ける。何してんのこれ。
「なぁ、名前なんてーの。それくらいいいだろ~」
「……」
黙ってる…ここで俺だったらくじけてる…スルースキル半端ねえな…
堀君は相も変わらずめげずに制服を引っ張るので、いつキレるかもわからないその様子を見守ることしかできない。まじかよ怒らせたら絶対怖いやつじゃんどうなんのこれ…
その心配をよそに堀君は諦めない。青筋立ってんだけど!?気づかない!?
しかしイケメン君は限界を感じたのか、躱すのも面倒臭くなったのか、観念したかのように両腕をあげた。降参したようだ。懸命な判断だと思う。
長く大きな溜息を吐いて諦めたような顔で渋々口を開く。
「俺は一宮あおい、まぁよろしくしてあげる」
「ひゅ~~すっげえ上から目線!最高!」
「褒めてんのそれ…まぁいいや、いちくんとでも呼んで~」
そう言ってヒラヒラと手を振るイケメン…もとい、いちくんは、また煙草に火を点け始めた。
ほら澪君も!と言われるので俺も簡潔に名前を言う。なんだかんだ三人揃って自己紹介まで終わってしまった。友達が…できた、のか?
その後堀君も煙草を取り出すので俺も煙草を銜え、三人揃って吸い始める。
体育館から流れる校歌を聴きながらまったりと過ごす。心地いいかもしれない、な。この感じ。まだ会って数分しか経ってないけど。
「LINE交換しようぜ」
安定の堀君がそう言うものだから言われるがまま携帯を取り出し、連絡先を交換する。そうして俺は始めてできた友達のラインをゲットしたのだった。なんだかんだ愉快で飽きなさそうな奴らだな、全員喫煙者なのも都合がいいし。
もはや運命すら感じるな。入学式をサボって煙草を吸いに来た三人が一同に会するなんて。と、らしくないことを考えて思わず笑みが零れる。
「な~に笑ってんの澪君」
「…うるさい」
「あんだよ~俺らもう友達だろ~」
「はは、ヤニ臭ぇ奴らしかいねえけどな」
楽しそうに笑う二人を見て、友達、友達かぁと感慨に浸ってしまう。
不安と期待を胸に…いやまぁ俺の野生の勘的に不安しかないのだが。この二人とは長い付き合いになりそうだ。空を見上げて何本目かもわからない煙を吐き出すのだった。

 

 

設定
佐伯澪 さえきれい 「澪くん」

9月26日(天秤座)O型 174㎝ 高校二年生

得意教科/日本史 苦手教科/英語
髪色/黒髪・暗めのアッシュ系 制服/ネイビーのカーディガン
ピアスは左に一個開いていたが気づいたら塞がっていた。煙草はメビウス。酒は苦手。
一人暮らし(家は宿泊などの溜まり場になっている) 妹が一人いる(ロリコン
料理はそこそこできる。やる気があれば掃除も。なければゴミ。
寒いのも暑いのも嫌い。痛いのも嫌い。ぶつくさ言いながらやる時はやる。
三馬鹿の中で割と常識人で真面目。よくキレる。ドがつくコミュ障。
ツッコミにキレがあるが、ツッコミに疲れると寝る。
特技はどこでも寝れるところ。綺麗好きだが大雑把。
根っからの引きこもり体質だが他二人のせいで脱ヒッキーに。
バイトは近所の飯屋のキッチン。ホールには意地でもでない(接客苦手)
寝起きが死ぬほど悪い。唐突に溜まり場(部室)の掃除をし始める。断捨離が楽しい。
アニメとか洋画、漫画などが好きだがゲームはしない。ゲーム機は他二人が持ってくる。
時々邦ロックのライブやフェスで豹変する。隠れオタク
呼び方
一人称・俺 二人称・お前、あんた 三人称・お前ら 
堀・堀君 一宮・いちくん

 

一宮あおい いちみやあおい 「いちくん」
12月14日(射手座)AB型 176㎝ 高校二年生
得意教科/現国 苦手教科/他全部
髪色/金髪・アッシュ系 制服/キャメル色のカーディガン(萌え袖)
ピアスバチバチ。計七個開けている。へそピを開けたい。煙草は赤マル。
酒を弱くないけどそんなに飲まない。
実家暮らし。姉(パリピ)がいる(仲良し)
ミラールックも余裕でできる。姉の買い物に付き合うこともしばしば(荷物持ち)
面倒臭がりだけど掃除は好き。料理は壊滅的。
女の子に媚びるのが得意。死ぬほどあざとい。許せるイケメン。
何でも卒なくこなす要領がいい。よく逆ナンされているのを見かける
年上のセフレがいるとかいないとか。否定も肯定もしない。たぶんいる。
バイトは駅チカのイタリアン。ホールもキッチンもやるけどキッチンの方がサボれるから好き。でも女ウケがいいから表に出てほしい(店長談)
低燃費。横顔が美しいけど他二人といると表情が崩れまくるのでレア。
その写真は高値で売れる。わりと自分の顔がいいことを自覚してる。
呼び方
一人称・俺 二人称・お前、こいつ 三人称・お前ら
堀・堀 佐伯・澪

 

堀奏多 ほりかなた 「堀くん」
1月16日(山羊座)A型 178㎝ 高校二年生
得意教科/英語以外の文系科目 苦手教科/理系全般
髪色/安定しない、コロコロ変わる 制服/パーカーか適当なカーディガン
ピアスは計五個。煙草はメビウス(安いので)
実家暮らし。弟がいる(仲良し)自分と似ていない弟が面白くて好き(わりとブラコン)
コミュ力おばけの愛すべき馬鹿。何かと言い出しっぺになりがち。うるさい。
人のペースを崩すのが得意でその餌食にずぶずぶとハマっていった他二人。
愛想は良いし世の中上手く渡れるタイプ。可愛がられやすい。
バイトは近所のパチ屋。よく客に貢がれてる。自覚済みのクズ。
よく黙ってりゃイケメン。それな。と言われがち。でも黙ったら死ぬ。
行動力が半端ないのに唐突に面倒臭さが爆発する。何もしなくなる。
配られたプリントをよく無くし他二人から貸してもらったものも紛失させる。
妙に喧嘩が強い。喧嘩なら拳で卍 たぶん風邪とかそんな引かない。馬鹿だから。
ヤンキーだと思われるパリピ。でも良い奴だし普通に優しい。
誰からも好かれるタイプ。でも他二人と遊んでるのが一番楽しい。
呼び方
一人称・俺 二人称・お前、あんた 三人称。お前ら
佐伯・澪くん 一宮・いち

 

 

部室兼溜まり場

堀が人脈を使い他2人の為に同好会という名目でゲットした部室を占領している。

古びたソファは前使っていた誰かの物らしい。とりあえず破れてるわ汚いわで布を被せてある。

物がどんどん増えてくので定期的に澪かいちが片付けるがすぐに汚れる。

何故か冷蔵庫や電気ケトルが置いてある。

基本的にサボりたい授業がある時、昼休み、イベント、放課後などに使われている。

場所は四階の角部屋。

滅茶苦茶ヤニ臭いので定期的な換気が必要。

お菓子やらジュースが常備してあり何故かボードゲームなども置かれてある。

西日がよくあたり眩しいのでカーテンが欲しいところ。

 

備え付けのエアコンはよく壊れる。

堀「こたつほしくね?!!!」

いち「折半すっか〜」

澪「フツーにエアコン直そうや」

 

禁止事項は特にないが、女を連れ込むのはNG。

澪「いちくんわかった?」

いち「こんなきったねーとこでヤりたかねぇよ」

ほり「ごもっとも」

 

鍵は2つ。堀が失くすのを案じていちと澪で保管している。

いち「とりあえずお前は持つなよ」

堀「だいじょ〜ぶだって!信じろって!」

澪「盛大なフラグが立ってる」

 

いつでも唐突に堀くんにグループラインで全員集合!と呼び出されることもしばしば。

ほり(全員集合ー!!)

いち(授業中なんだけど、、、)

澪(寝てるので既読がつかない)

 

 

追加人物
佐藤秀 さとうひで 「佐藤くん」

堀と澪の好奇心キス現場を目撃してしまい哀れにもそれをいちに見つかられてしまうモブである。

堀、澪、いちと同じクラスの真面目くん。

風紀委員長で先生にも頼られている(雑用を押し付けられt)

噂に踊らされるタイプ。頭はわりといい方だけど要領は悪い。

何故か三馬鹿には敬語を使ってしまう。正義感が強いが推しには弱い。

クラスでは山田と田中と連んでいる。インキャ。不良は相容れない存在だと思っている。ごもっとも。

今まで三馬鹿のようなタイプに出会ったことはなかったので興味深くはある。

小中と皆勤賞でサボった事もないが三馬鹿の所為でそれも破られてしまう事がしばしば。

目撃した担任の先生に心配される事も。

先生「佐藤、あの三馬鹿に虐められてないか?」

佐藤「いや…あの人たちは…悪い人たちではないんです…不可解なだけで……」

先生「そ、そうか……」